逆転層は天気が良いということではない?【気象予報士への道】
対流圏の空気は、通常、上にいくほど気温が低くなります。そして、その、上と下との間の気温差が小さいほど大気は安定している。大気の安定・不安定の話ですね。
それでは、上の空気の方が暖かく、下の空気の方が冷たい場合は?
下にある空気が上昇すると、断熱変化により気温がさらに低くなるため、周りの空気より冷たい。冷たい空気は重いので、下降していきます。
上昇した時に周りの空気より冷たいという関係性が絶対的に保証されるため、この場合は絶対安定になります。
ということで、対流圏なのに上の空気の方が暖かいような状況、逆転層のお話です。
逆転層は、発生原因によって3つに分類されます。
①接地逆転層
地面に接している辺りが逆転層になるタイプ。発生原因は夜の間の放射冷却です。よく晴れた穏やかな夜の翌朝は冷え込むってやつですね。
太陽の光を浴びたら暖かさを感じる。その温もりは太陽が放出しているエネルギーなのですが、実は地球もひっそりとエネルギーを放出しています。昼は太陽からもらうエネルギーの方が大きいので、私たちは暖かさを感じるばかりですが、夜は太陽が沈んでいます。そのため、地球が一方的にエネルギーを放出していることになり、日の出前の早朝が一番冷え込みます。
そして、地面が冷たくなっているため、地上付近の空気も冷やされ、上の空気より地上付近の空気の方が冷たくなります。このように、相対的に上の空気が暖かくなることにより発生するのが接地逆転層です。
ただ、夜でも雲があれば、地球が放出したエネルギーを雲が受け止めて地上に返してくれるので、冷え込みが弱く、逆転層はできないです。
また、風が吹いていると空気がかき混ぜられるので、地上と上空の空気の気温が同じになります。この場合も逆転層はできません。
この逆転層は、日の出とともに地上の空気が暖められ、次第に解消されていくものです。
②沈降性逆転層
発生原因は高気圧の下降気流。空気は上下方向に動く時、断熱変化をします。そのため、下降気流では断熱圧縮、断熱昇温が起こっており、地上より少し上の空気の気温が高くなることで逆転層が形成されます。このように、上にある空気が暖められることにより発生するのが沈降性逆転層です。
③移流性逆転層(前線性逆転層)
移流とは、水平方向の空気の移動です。垂直方向に空気が移動することは対流といいます。
移流してきた冷たい空気と暖かい空気がぶつかり合う。性質の異なる空気は混ざり合わないので、軽い暖かい空気が重い冷たい空気の上を上昇していきます。この時の、冷たい空気と暖かい空気の境目が逆転層です。このように、移流により発生するのが移流性逆転層です。
お気づきかとは思いますが、上の説明は前線のでき方と同じもので、前線面=移流性逆転層になっています。そうすると前線のあるところに逆転層が発生するということになりますが、逆転層の大気は絶対安定なのでは…?という疑問があります。
確かに前線は、暖かい空気が冷たい空気の上を上昇していくため、上昇気流により雲が発生して天気が悪くなります。しかし、逆転層の大気は安定しているわけで。
この逆転層の存在が、実際の天気にどう反映されてくるのか気になるところです。