専門用語と戯れる【気象予報士への道】
勉強あるある。
いきなり新しい用語が出てきて、定義が述べられて、原理などが説明される。理解はできる。けど、それを何に使うのかは説明されない。
しばらく経って、応用として位置づけられている内容を学んだ時に、その説明に用いられたり、問題の解法として登場したりして「ああ、なるほど」となる。
個人的には、一般に応用とされるものを学んでから、その説明に用いられる部品たちはこれらです。というパターンの方が好きですが、教材によってはそうもいかず。
今回も、例のごとく用語を先に学ぶパターンになってしまいました。どうにかして用語を自身に定着させていくために、用語の定義をアウトプットしていきます。
まずは用語のラインナップです。
温位:ある高さにある空気を1000hPaまで乾燥断熱変化させたときの気温を絶対温度で表したもの
相当温位:温位に、空気中に含まれる水蒸気がすべて凝結した時の凝結熱による気温の変化を加えたもの
湿球温位:空気が飽和している高さから1000hPaまで湿潤断熱変化させたときの気温を絶対温度で表したもの
とりあえず、今回は温位について。
温位:大気の安定性を確認できる
以下、地上が1000hPaであると仮定して考えます。
上空1000mで20℃、地上で25℃である場合の温位を求めます。
上空1000mで20℃の空気を、1000hPaである地上まで乾燥断熱変化させ、絶対温度で表すと、
20[℃] + (1000[m] / 100[m]) × 1[℃] = 30[℃]
30 + 273 = 303[K]
なので、上空1000mにある空気の温位は303Kです。地上にある空気は元々1000hPaの気温なので、
25 + 273 =298[K]
絶対温度で表して、地上にある空気の温位は298Kとなります。
これで、地上にある空気よりも上空にある空気の温位の方が大きいことがわかりました。
そして、温位というのは計算方法からわかる通り、その空気の温度によって決まります。空気の温度が高いほど温位も高くなるということです。
つまり、地上にある空気よりも上空にある空気の方が温位が高い=暖かい。これは、暖かい空気は軽いので、上に存在する、ということとも整合性が取れています。自然の摂理に適っているので大気の安定性は高いです。
大気の安定性を確認
それでは、本当に大気は安定しているのか確認します。地上にある空気が何らかの作用で上昇したと仮定すると、
乾燥断熱変化をした場合、
25[℃] - (1000[m] / 100[m]) × 1[℃] = 15[℃]
となり、周囲の空気よりも冷たくなります。冷たい空気は重い。そのため、上昇してきた空気は下降します。
湿潤断熱変化をした場合、
25[℃] - (1000[m] / 100[m]) × 0.5[℃] = 20[℃]
となり、周囲の空気と同じ気温になります。そのため、上昇してきた空気はその場に留まります。
どちらも場合においても、空気が上昇し続けるような状況にはならないことがわかりました。つまり、大気は安定しています。
温位は大気の安定性を手軽に知ることができるツール
上空の空気を断熱変化させた計算と、地上の空気を断熱変化させた計算の2つを行いましたが、結局やっていることは同じです。断熱変化をさせ、2つの空気が同じ高さになったところで、どちらの方が暖かいのか?と比べて大気の安定性を調べているだけでした。
温位というものは1000hPaという基準を設けて、空気の気温の比較をしやすくしてくれているようです。
さて、それでは最後にもう一度まとめます。
温位とは、ある高さにある空気を1000hPaまで乾燥断熱変化させたときの気温を絶対温度で表したもの。空気の気温に依る。温位を比べることで大気の安定性を知ることができる。